製造業Webマーケティング完全ガイド|成果が出る7施策と始め方
「展示会や紹介に頼り切りで、この先どうすればいいのか不安」 「Webマーケティングを始めたいが、何から手をつければいいか分からない」 「うちのようなニッチな製品は、そもそも検索されないのでは?」
製造業のマーケティング担当者・経営者から、こうした声をよく耳にします。技術情報を探している顕在顧客は必ず存在し、ニッチな製品でも十分に成果を出すことが可能です。
この記事では、成果につながりやすい7つの施策と「どれから始めるべきか」の考え方を整理しました。
製造業Webマーケティングでよくある5つの課題と解決策
製造業のマーケティング担当者や経営者の方からよく聞かれる課題は以下の5つに集約されます。
「何から始めればいいか分からない」
「ニッチな製品は検索されないのでは?」
「社内にWebマーケ担当がいない」
「予算がどれくらい必要か分からない」
「効果が出るまでどれくらいかかるのか分からない」
それぞれの解決策を順に解説いたします。

「何から始めればいいか分からない」→ 現状の見える化から
最初にやることは、GA4・Search Console・競合サイトの3点だけ確認することです。いきなり施策を選ばず、今のWebサイトの状態をざっくり把握するのが近道となります。
この3つを把握すれば、「どのページから直すべきか」「どんな情報が足りないか」が明確になります。
| 見る場所 | 最初に見る指標 | 意味 |
|---|---|---|
| GA4 | ユーザー数 / エンゲージメント率 | どれくらい来て、どれくらい関心を持たれているか |
| Search Console | 検索クエリ | どんなキーワードで見つけられているか |
| 競合サイト | 情報の有無 | 自社サイトに足りていない情報は何か |
「ニッチな製品は検索されないのでは?」→ むしろ有利
検索ボリュームが少ないキーワードほど、競合が少なく上位表示されやすくなります。月間検索回数が少ないキーワードには、競合サイトが少なく上位表示されやすい点と、検索している人の検討度合いが高い(顕在顧客が多い)点というメリットがあります。
月10アクセスでも1件が商談につながれば十分にペイします。ニッチだからこそ勝てる「スモールキーワード戦略」は、製造業ならではの強みといえるでしょう。
「社内にWebマーケ担当がいない」→ 役割を切り分ける
全部を内製する必要はなく、戦略設計は外部、情報提供は社内と役割分担します。一部を外部パートナーに頼りながら、少しずつ社内でできる範囲を増やすのが無理のない進め方です。
| 社内でやること | 外部に任せると効率的なこと |
|---|---|
| 自社製品の強み整理 お客様の声・事例収集 技術情報の提供 | SEO設計 広告運用 サイト改善のディレクション メール設計・ライティング |
「予算がどれくらい必要か分からない」→ 3ヶ月のテスト予算から
いきなり大きな投資で失敗しないよう、まず3ヶ月のテスト予算で反応を見ます。 テスト結果に基づき、反応の良い施策は継続・拡大し、もし予算やリソースが限られている場合は、最も効果の高い施策に集中させるのが安全な進め方です。
| 施策 | 社内実施(インハウス)の場合 | 外注(アウトソース)の場合 |
|---|---|---|
| メールマーケティング | 月数千円〜数万円(配信ツールの利用料) | 月5万円〜(ツール代+企画・原稿作成・分析代行) |
| SNS投稿 | ほぼ0円(人的コストのみ) | 月10万円〜(戦略立案、投稿作成、運用代行) |
| SEOの初期整備 | ほぼ0円(人的コストのみ ※専門知識が必要) | 月数万円程度〜(コンサルティング、または初期設定代行) |
| 広告(テスト運用) | 月5万円〜(効果測定のための推奨広告実費) | 月7万円〜(広告実費5万円+運用手数料2万円〜) |
「効果が出るまでどれくらいかかる?」→ 施策ごとに時間軸が違う
広告のように「お金で露出を買う」施策は効果が早く(短期)、SEOのように「信頼を蓄積する」施策は時間がかかります(長期)。このため、すぐに成果が出る「短期施策」と、将来の資産になる「長期施策」をバランス良く組み合わせることが重要です。
| 施策 | 目安期間 | 位置づけ |
|---|---|---|
| Web広告 / メール | 1〜2ヶ月 | 短期で反応を確認 |
| ホワイトペーパー / ウェビナー / サイト改善 | 3〜6ヶ月 | 中期的にリード・商談を増やす |
| SEO / コンテンツマーケティング | 6〜12ヶ月 | 中長期で問い合わせを安定させる |
短期施策だけに頼ると止めた瞬間に成果も止まります。短期と長期を組み合わせることで、数字のブレが小さくなり社内説明もしやすくなるでしょう。
製造業Webマーケティングで成果を出す7つの施策
施策は7つありますが、全部を一度にやる必要はなく、まずは自社の状況に合わせて2〜3の施策を選び、取り掛かりやすいものから始めてみましょう。

施策①:SEO対策 ― 探している顧客に最短距離で届く
技術ワード × 課題ワードを意識します。製造業で最も費用対効果が高くなりやすいのがSEO(検索エンジン対策)です。営業がゼロの時間帯でも、検索を通じて課題を持った技術者や導入を検討している購買担当がサイトを訪れます。
キーワード例として、「ステンレス 316L 表面粗さ」「画像処理 検査 装置 選び方」「アルミ ダイカスト 歩留まり 改善」などがあります。
技術者・購買担当・経営層では、調べる言葉も知りたい情報も異なります。製品ページだけでなく、技術コラムや導入事例ページを揃えることで、検索からの流入とコンバージョン率の両方を高められるでしょう。
タイトルタグやメタタグの設定は、「SEOメタタグの正しい設定方法」や「ディスクリプション改善のコツ」も参考になります。
施策②:Web広告 ― 今すぐ検討層を確実に拾う
月5万円のテスト予算から、ニッチキーワード+地域名で開始します。
| 広告種類 | 特徴 |
|---|---|
| リスティング広告(Google検索連動) | 導入検討中の顧客へピンポイント到達 |
| ディスプレイ広告 | 業界サイト閲覧者への認知・再想起 |
| LinkedIn広告 | BtoBの役職者や特定業種に絞った配信 |
検索連動型のリスティング広告は「すでに課題を持って検索している顧客」にアプローチできるため、製造業との相性が良好です。反応の良いキーワードや訴求が見えてきたところで徐々に拡大していきます。
施策③:ホワイトペーパー ― 情報収集中の顧客のリード獲得
装置やシステムの導入を検討する際、技術者はの方であれば「比較資料」や「技術解説」を見たいと思うはずです。よく読まれるテーマとして、測定方法・検査方式の比較、工程改善や省人化のポイント、装置・技術の選定チェックリスト、導入事例をまとめた事例集などがあります。
フォームの入力項目は「会社名・氏名・メールアドレス」など3〜5項目に絞るのが一般的です。また、ダウンロード後のサンキューメールやフォロー体制を整えることで、リードから商談への転換率が大きく変わります。
詳細は「製造業のリード獲得 実践ガイド」で解説しています。
施策④:ウェビナー ― 見込み客との関係を深める
営業色を抑え、技術トレンドや事例紹介に重点を置き、展示会や訪問営業の代替・補完として定着したのが、オンラインの技術セミナーやウェビナーです。検討段階が進んだ見込み客と、より深くコミュニケーションを取る場として活用できます。
製造業で好まれるテーマ例として、「〇〇検査のトレンドと、装置選定のポイント」「不良削減・歩留まり改善の事例紹介」「画像処理による外観検査の自動化ステップ」などがあります。
集客は既存顧客へのメール案内、自社サイト・SNSでの告知、場合によっては広告を組み合わせます。開催後のアーカイブ動画をWebサイトに掲載すれば、SEOの観点でもプラスです。
施策⑤:メールマーケティング ― 既存・休眠顧客を再活性化
展示会で獲得した名刺や過去に取引のあった企業に対し、専用ツールを用いて定期的に情報を配信します。接点を持ち続けることで、休眠顧客の掘り起こしを狙います。
【配信の工夫】
配信日時(火〜木の10時・14時): 週明けや週末の多忙な時間帯を避け、比較的業務が落ち着き開封されやすい「週の中日」を狙い撃ちします。
専用ツールの活用: 一斉送信には必ず専用の配信サービスを使用します。個人のメールソフトによる誤送信やスパム判定のリスクを回避し、開封率などの数値分析を行うためです。
施策⑥:Webサイト改善 ― 見られて終わりを問い合わせに変える
SEOや広告で集客ができていても、「問い合わせボタンが分かりづらい」「導入事例が掲載されていない」といった理由で、見込み客が離脱するケースは非常に多いです。
以下の2つの観点でサイト全体をチェックします。
信頼性の担保(コンテンツ):導入事例や実績、会社概要、技術・品質に関する情報が分かりやすく整理され、顧客に信頼感を与えているか。
導線の整備(CTA):問い合わせ・資料請求などのボタンが、ファーストビューや本文中・下部など、すぐに見つかる場所に設置されているか。
施策⑦:SNS発信 ― 技術力とブランドの空気感を伝える
週1〜2投稿で、将来の問い合わせにつながる下地作りをします。製造業では LinkedIn(技術者・経営層が多い)や YouTube(技術情報と相性が良い)が有力な選択肢です。
投稿内容例として、開発の裏側や技術的なこだわり、展示会やセミナーの様子、よくある質問への回答などがあります。
すぐに大量の反響は出ませんが、どんな会社か、何に強いのかが伝わりやすくなります。ムリのない頻度から始めてみるのがおすすめです。
活用イメージ:製造業Webマーケティングの一般的なパターン
製造業のWebマーケティングでは、単一の手法ではなく、業種や規模に合わせて2〜3の施策を掛け合わせることで、相乗効果を最大化します。 では、企業のタイプ別にどのような組み合わせが効果的なのか、3つの具体的なモデルを見ていきましょう。
パターン1:ニッチな精密部品メーカー
ニッチな技術キーワードでSEO対策を実施し、技術コラムや測定方法の解説記事を追加。併せて技術解説をまとめたホワイトペーパーを作成し、ダウンロードフォームからリードを獲得。半年ほどで検索経由のアクセスが増え、技術相談や図面ベースの問い合わせが増加しました。

パターン2:大型装置を扱う産業機械メーカー
ウェビナーを軸にした施策を展開。オンラインでの技術セミナーを定期的に開催し、既存顧客と展示会で出会った見込み顧客に案内。営業色を抑えた構成で参加のハードルを下げ、セミナー資料のダウンロードと個別相談の案内を行うことで商談のきっかけにつなげています。

パターン3:従業員数30名程度の中小企業
既存名刺の棚卸しによるメールニュース配信と、月5万円程度のリスティング広告からスタート。展示会で交換した名刺や過去の見積もり企業に、技術トピックや事例を紹介するメールを月1〜2回配信します。同時に、自社名+地域名やニッチな技術キーワードで少額の広告を運用し、Webサイトへの流入を増加させました。

既存名刺の棚卸しによるメールニュース配信と、月5万円程度のリスティング広告からスタート。展示会で交換した名刺や過去の見積もり企業に、技術トピックや事例を紹介するメールを月1〜2回配信します。同時に、自社名+地域名やニッチな技術キーワードで少額の広告を運用し、Webサイトへの流入を増加させました。
FAQ:製造業Webマーケティングでよくある質問
Q1. 中小規模の製造業でもWebマーケティングは必要ですか?
はい、必要です。会社規模にかかわらず技術情報をWebで検索する文化は定着しています。 むしろニッチな製品ほど、少数の検索から高い確度の問い合わせにつながるケースが多いです。
Q2. まずは何から始めるのがおすすめですか?
GA4・Search Console・競合サイトの最小3点確認で現状を整理し、2〜3施策に絞って3ヶ月のテストを行います。短期的な反応を見たい場合は広告やメール、中長期の土台を作りたい場合はSEOやコンテンツから着手するのが良いでしょう。
Q3. どれくらいの予算を見ておくべきでしょうか?
施策の組み合わせによります。メールやSNS発信なら月数千円から可能です。 広告やSEO外注なども組み合わせる場合、全体で月5〜10万円程度が目安です。 大切なのは無理のない範囲でスタートし、数字を見ながら投資配分を調整することです。
Q4. 社内にマーケティングの専門人材がいなくても大丈夫ですか?
専門人材がいなくても始められます。戦略設計や運用の要所は外部パートナーを活用しつつ、社内では製品情報や事例の提供・確認に集中する役割分担が現実的です。
Q5. ニッチな製品でも本当に効果はありますか?
効果があります。検索ボリュームが少ない=効果がないというわけではありません。競合サイトがほとんどいないキーワードで上位表示できれば、少ないアクセスでも高い確度のリードを獲得できます。
Q6. SEOと広告、どちらを優先すべきですか?
短期で結果を確認したい場合は広告、半年〜1年先を見据えて土台を作りたい場合はSEOが向いています。予算に余裕があれば、広告でテストしながら並行してSEO・コンテンツの整備を進める形が最も安定しやすいパターンです。
Webマーケティングの始め方:3つのステップ
前章でご紹介したような「成果が出る組み合わせ」を自社で実践するためには、正しい順序で着手することが重要です。以下の3ステップで「小さく回し始める」ことからスタートしましょう。

ステップ1:現状把握(GA4・Search Console・競合)
GA4ではユーザー数とエンゲージメント率をチェックし、見られているページ・エンゲージメントが低い(=すぐ離脱されている)ページを把握します。Search Consoleでは上位の検索クエリを確認し、何についてすでに評価されているかを整理します。競合サイトは2〜3社分を眺め、自社サイトに足りない情報をメモします。これにより、まず直すべきページ・追加すべき情報が明確になります。
ステップ2:優先する2〜3施策を決める
自社の状況に合わせて、優先する2〜3の施策を決めます。短期の反応が欲しい場合は広告またはメール、中長期の土台を作りたい場合はSEOまたはコンテンツ、質の高いリードを増やしたい場合はホワイトペーパーまたはウェビナーを選択します。
すべてを同時にやろうとせず、今はこの2つに集中すると決めることで、社内のリソース配分や稟議もしやすくなります。
ステップ3:3ヶ月のテストと振り返りの場をつくる
選んだ施策について3ヶ月のテストを宣言します。テスト期間中は、月1回関係者で数値を振り返る定例を設け、よかった点・うまくいかなかった点を簡単にメモし、次の1ヶ月で試すことを1〜2個だけ決めます。
完璧な計画よりも、動きながら学ぶ仕組みをつくることが、長期的には大きな成果につながります。
製造業を知り尽くしたパートナーと一緒に進めるという選択肢
ご紹介したステップを社内だけで完結できれば理想的ですが、「日々の業務で手一杯」「専門知識を持つ担当者がいない」というケースも少なくありません。 そのような場合は、無理に全てを抱え込まず、業界への理解が深いパートナーを頼るのも一つの戦略です。

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まとめ|まずは2〜3施策×3ヶ月から始めてみる
製造業のWebマーケティングは、ニッチだからこそ意味がある領域です。成功のポイントは、以下の3点に集約されます。
1.不安の正体を分解し、現状を見える化すること
2.全部ではなく、2〜3の施策に絞って小さく始めること
3.短期(広告・メール)と長期(SEO・コンテンツ)をバランスよく組み合わせること
今日できることは、GA4・Search Console・競合サイトを30分だけ眺めて、気づいたことをメモするところからです。そのうえで、どの施策から始めるか、3ヶ月で何を検証するかを決めてみてください。
もし、一社で考えるのが難しいと感じたときは、外部の専門家の力を借りるのも、前に進むための一つの選択肢です。

