製造業マーケティングの始め方|中小企業の受注を増やす7つのステップとWeb活用術
中小規模の製造業では「展示会の出展や紹介だけの営業活動に限界がある」「大規模なプロモーションは予算的に難しい」といった課題を抱えている企業も少なくありません。
市場競争力を高めて安定した経営基盤を築くためには、マーケティング活動を通じて自社の技術力・強みを発信し、狙ったターゲットに積極的なアプローチを行うことが重要です。
この記事では、製造業にマーケティングが必要な理由や取り組むメリット、中小企業でも実践できる具体的なステップ、成果につなげるポイントなどを解説します。
製造業におけるマーケティングとは
マーケティングとは、商品・サービスが売れる仕組みをつくる施策全般のことです。
製造業においては、自社が持つ技術力や製品価値をターゲットへ正しく伝えて、見込み顧客の獲得から商談、契約までつなげるプロセス全体を戦略的に設計することを指します。
また、契約に至った既存顧客と継続的な信頼関係を築き、長期の取引やパートナー企業として併走し続ける体制を目指すことも、マーケティングの重要な役割の一つです。
製造業のWebマーケティングについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
製造業Webマーケティング完全ガイド|成果が出る7施策と始め方
なぜ製造業にマーケティングが必要なのか
市場競争が激しい製造業において「高品質・高性能な製品を作る」「高い技術力を持っている」というだけでは、案件の獲得が難しくなっています。
自社が選ばれるためには、ターゲットに対して「独自の強みや価値をどのように伝えるか」「いかに効率的にアプローチするか」というマーケティングの視点が求められます。
製造業にマーケティングが必要とされる具体的な理由には、以下が挙げられます。

理由1.購買行動がオンラインにシフトしている
インターネットが普及したことにより、BtoB取引のあり方が大きく変化しています。
購買担当者・設計者が受注先または製品を選ぶときの購買行動のプロセスが、オフラインからオンラインへと変わってきています。
▼オンライン上の購買プロセスの例(顧客視点)
- 1. まずはインターネットで検索して会社や製品を調べる
- 2. 自社の課題・ニーズに対応できるか見極める
- 3. 気になった会社へ見積もりの依頼や資料請求を行う
- 4. 自社の要件にマッチする会社に商談を依頼する
オンライン上で情報収集や比較検討のプロセスが完結するケースも多いため、インターネット検索の段階で自社のWebサイトに訪れてもらうためのマーケティング施策が必要です。
理由2.対面営業の社内リソースに限界がある
製造業の従来の営業スタイルは、訪問によって「足で稼ぐ」方法が主流とされていました。
しかし、少子高齢化によって深刻な人手不足に直面している中小企業においては、限られた営業チームで受注できる件数に限界があります。訪問営業の場合、1人の営業担当者が1日に訪問できる数は物理的に限られるほか、交通費や時間的なコストもかかります。
中小企業が限られたリソースで効率的に営業活動を行うためには、Web経由で顧客層との接点を増やし、商談につなげる仕組みづくりが必要といえます。
理由3.技術・製品の専門性が高く訴求が難しい
BtoB向けの技術や製品は、専門性が高く「自社の価値を正しく伝えることが難しい」という課題があることも理由の一つです。
製造業向けのイベントや展示会のような不特定多数への画一的な情報発信では、深い関心・ニーズを持つ顧客層に響かず、ビジネスチャンスを逃してしまう可能性があります。
自社の強みや価値を理解してもらうには、現場の技術者・購買担当者・設計者・経営者などの意思決定者の階層に応じて、分かりやすい伝え方で情報を発信することが求められます。
具体的には、自社の技術や性能をターゲットに伝わる表現に翻訳して、「顧客目線のベネフィット(利益・価値)」に変換することが重要です。
製造業のマーケティング活動がもたらす4つのメリット
製造業がマーケティングに取り組むことで、市場競争力を高めて安定した経営基盤づくりを目指すことができます。
主なメリットには、以下の4つが挙げられます。

効率的に見込み顧客や商談機会を獲得できる
マーケティングによって新たな集客の経路を増やすことにより、効率的に見込み顧客を獲得できるようになります。例えば、以下のような施策が挙げられます。
▼集客経路を増やす施策例
- ターゲットが求めるコンテンツを発信してWeb検索経由でのアクセスを増やす
- ターゲットに有益な情報をまとめた資料を作成してダウンロードを促す など
これにより、従来の展示会や訪問営業では接点を持てなかった層や、潜在的なニーズを持つ層などと新たに出会える可能性が高まり、商談機会を増やせることが期待できます。
ブランドイメージの構築・向上を図れる
ブランドイメージの構築・向上を図れることもマーケティングのメリットです。
「自社の強みや技術力で何を実現できるか」「競合他社にはない独自の価値は何か」を一貫したメッセージとして発信し続けることで、市場にブランドイメージを浸透させられます。
▼ブランドイメージの構築に役立つ情報例
- 企業理念
- 製品のコンセプト
- 将来のビジョン
- 社会的なミッション
- 課題解決の実績
- 外部評価 など
ブランドイメージの構築を通じて製造業としての信頼性や付加価値が高まれば、価格競争に巻き込まれにくくなり、市場での競争優位性を築くことにつながります。
社内の営業リソースを有効活用できる
オンラインによる集客基盤を構築することで、非効率な訪問営業や電話営業から脱却して、営業担当者がより付加価値の高い業務に注力できるようになります。
▼営業リソースを付加価値業務に転換する例
- 資料ダウンロードに至った有望な見込み顧客へのフォロー
- 既存顧客の潜在的なニーズに応える個別提案の実施 など
人手不足の課題を抱える中小企業の製造業において、限られた営業リソースを効率的に活用できるようになることは、組織全体の生産性向上に直結します。
事業活動の安定性を高められる
製造業のマーケティング活動は、事業活動の安定性を高めるメリットもあります。
営業担当者のノウハウ・スキルに依存した属人的なアプローチや、やみくもな訪問・電話営業には、以下のような課題があります。
▼課題例
- 営業担当者一人ひとりの成果にばらつきが生まれやすい
- 優秀な営業担当者が退職すると新規案件の獲得数が減少してしまう
- 「運」に左右される要素が大きく、受注数や売上が変動しやすい など
マーケティング活動によって新規顧客との接点を確保したり、既存顧客と長期的な関係性を構築したりする仕組みをつくることで、受注数・売上の安定性が高まります。
中小企業が持続的な事業活動を目指すうえでも、個々のスキルに依存しにくいマーケティング基盤を構築することが有効です。
製造業マーケティングの始め方|7つのステップで解説
製造業のマーケティングに取り組む際は、「誰に・何の情報を・どのような方法で伝えるか」といった戦略を立てて、具体的な施策に落とし込むことが必要です。
ここからは、製造業マーケティングの始め方を7つのステップに分けて解説します。

①市場環境や競合他社を分析する
まずは自社を取り巻く外部環境を分析します。
市場環境や競合他社の状況を分析することで、「自社が市場でどの立ち位置にいるのか」「競争優位性を確保するためにどのような戦略が必要か」を客観的に整理できます。
これらの分析には「3C分析」や「STP分析」といったフレームワークの活用が可能です。
▼各フレームワークの分析項目
| フレームワーク | 分析項目 | 具体例 |
|---|---|---|
| 3C分析 | 市場・顧客 | 市場規模、顧客特性、購買行動、顧客ニーズ、業界トレンド など |
| 競合 | 市場シェア、商材やビジネスモデルの特徴、業界内でのポジション など | |
| 自社 | 自社の強み・弱み、経営リソース、商材やビジネスモデルの特徴、業界内でのポジション など | |
| STP分析 | セグメンテーション | 特定の軸で市場を細分化して、顧客層をグループに分類する |
| ターゲティング | 細分化したグループのなかから自社がターゲットとして狙う市場を選ぶ | |
| ポジショニング | ターゲットとする市場における自社の立ち位置を決める |
②自社の強みや価値を明確にする
外部環境の分析結果を踏まえて、自社独自のアピールポイントを明確にします。
主観的な技術やスペックではなく、「顧客にとってその技術や製品がどのようなベネフィットを生み出すか」といった客観的な視点で強みや提供価値を考えることが重要です。
▼ベネフィットを明確にするための検討項目
- 競合他社にはない技術・サービス・設備・生産体制などがあるか
- 自社の技術や製品でどのような課題・ニーズを解決できるか
- 自社を選ぶことで顧客にどのようなメリットがあるか
- 顧客の要望に対するきめ細かな対応力はあるか など
自社の強みと価値を明確に定義することで、顧客に発信するメッセージの方向性が定まり、一貫性のある情報提供や顧客体験の提供が可能になります。
③ターゲットを定義する
自社の製品・サービスを売り込むターゲットを具体的に絞り込むことが必要です。これにより、マーケティング施策において課題・ニーズを満たす訴求方法やコンテンツを検討できるようになります。
製造業の場合では、「分野」「所属部門」「決裁権の有無」といった大まかな属性に加えて、顧客が抱えている「具体的な悩み」まで掘り下げることが重要です。
また、製造業では最終決裁までに複数のプロセスを踏むことも多いため、「情報収集」「稟議」「最終比較」などの検討段階に応じてターゲットを細かく分類することも必要です。
▼製造業におけるターゲット設定の具体例
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| 製造分野 | 食品工場、化粧品製造工場、医薬品製造工場 |
| 所属部門 | ・製造管理部門の管理者 ・品質管理部門の管理者 |
| 悩み | ・ライン替えの労力が大きくリードタイムの損失が大きい ・設備の老朽化や故障による稼働停止が頻発している ・人に依存した作業で品質不良が発生している |
| 検討プロセス | 1. 情報収集(現場管理者) 2. 評価・比較検討(技術者) 3. 社内稟議(現場管理者・技術者) 4. 最終決定(経営者・工場長) |
④購買プロセスを設計して接点を構築する
認知獲得のためのステップとして、ターゲットとの接点を構築することが必要です。
ターゲットがどのような課題・ニーズを持ち、情報収集から契約までどのような購買プロセスを歩むのか、具体的な流れを設計して視覚化できるようにします。
購買プロセス上の認知経路や検討段階に応じて、ターゲットが必要とする情報の提供を行うことで、自社を知らない層との接点を増やすことができます。
▼ターゲットとの接点を構築する施策例
| 施策 | 概要 |
|---|---|
| 自社WebサイトのSEO(※) | 自社の技術・製品と関連性の高いキーワードの設定やコンテンツの発信で、検索エンジン経由での集客を増やす |
| 自社SNSアカウントの運用 | 製品・サービスのコンセプト動画や技術者へのインタビュー動画、生産設備体制の写真などを公開して、認知獲得からWebサイトへの集客を促す |
| コンテンツマーケティング | 技術解説ブログ・専門用語解説・課題解決策などのコンテンツを作成・発信して、検討段階に応じたターゲットの集客を増やす |
| リスティング広告 | 技術名や部品名などの顕在キーワードで検索する購買意欲の高いターゲットにWeb広告を表示させ、Webサイトへの集客を増やす |
| 業界情報サイトへの広告 | 製造業向けの情報サイトやポータルサイトに自社広告を出稿して、潜在層をWebサイトに集客または資料ダウンロードページへ誘導する |
※SEO(Search Engine Optimization:検索エンジンの最適化)とは、自社Webサイトを検索エンジンに上位表示させるための対策のこと。
製造業における自社WebサイトのSEOやコンテンツマーケティングについては、こちらの記事をご確認ください。
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製造業のコンテンツマーケティングの重要性や活用するメリットとは?取り組みやすいコンテンツの種類や導入のステップも解説
⑤アクションを促す仕掛けをつくる
Webサイトに集客して認知を増やすだけの施策では、見込み顧客の獲得までつながらないことがあります。訪れたターゲットが「もっと知りたい」と興味関心が高まるような有益なコンテンツを提供することが必要です。
▼コンテンツの具体例
- 自社の実績・導入事例の紹介
- 研究者や設計者向けの専門的情報の提供
- 課題に応じた解決策の提案 など
また、Webサイトやコンテンツ内でアクションを促す仕掛けを設けることにより、見込み顧客の情報を入手でき、その後のアプローチにつなげられます。
▼アクションを促進する仕掛けの具体例
- ブログ記事内にホワイトペーパーのダウンロードリンクを設置する
- 製品紹介ページにチャットボットの導入相談・シミュレーションを設置する
- 導入事例や料金紹介のページに見積り申込みのリンクを設置する
- Webサイトのメニューバーにメールマガジンの登録リンクを設置する など
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⑥見込み顧客を分析して個別アプローチを行う
獲得した見込み顧客に対して、一人ひとりに合わせた個別アプローチを実施します。
「Webサイトに訪れたユーザーがどのような経路を辿ったか」「どのようなアクションに至ったか」などを分析することで、抱えている課題や興味関心の度合いを推測できます。これらの分析に基づいて個別アプローチを行うことで、商談化の可能性を高められます。
また、アプローチの対象には、「オフラインで獲得した見込み顧客」も含まれます。オフライン・オンラインを組み合わせたハイブリッドなアプローチを行うことで、ビジネスチャンスを最大化できます。
▼個別アプローチの施策例
| 施策 | 具体例 |
|---|---|
| MAツール(※2)の活用 | ・見込み顧客の属性や行動履歴を基にグループに分類して、最適化されたメールを自動で配信する ・Web上の行動履歴を分析して、受注確度のスコアが高い見込み顧客に電話・訪問営業を行う |
| 招待メールの送信 | ・Webサイトで獲得した見込み顧客に、展示会の招待メールを送信する ・展示会で名刺交換をした見込み顧客に、セミナー(ウェビナー)への招待メールを送信する |
※MA(Marketing Automation)は、見込み顧客の情報を一元管理して、行動の可視化や関心度のスコアリング、検討段階に応じたメールの自動送信などを行えるツール。
なお、メールを使った製造業マーケティングについてはこちらの記事で解説しています。
製造業メールマーケティングとは?始め方5ステップと成功法を解説
⑦既存顧客へのフォローを実施する
既存顧客へのフォローも、製造業マーケティングにおいて重要といえます。
製造業では、商材を売って終わる「売り切り」だけでなく、その後の保守・メンテナンスや消耗品の販売などの継続的な取引を目指すビジネスモデルが多くあります。
見込み顧客へのアプローチに加えて、既存顧客へのフォローを通じてリピート契約や追加受注を増やすことで、LTV(※)の向上につながり安定した経営基盤の構築を目指せます。
▼既存顧客に対するアプローチ例
- 納入した製品のメンテナンスやリプレイスの時期に合わせて、営業担当者による電話・訪問を行い、保守サービスや設備入れ替えの提案を行う
- メールマガジンを通じて技術的なサポートや新サービスの情報発信を定期的に行う
※LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、1人の顧客が取引企業にもたらす利益の総額のこと。
製造業マーケティングで成果につなげるポイント
製造業マーケティングを通じて成果につなげるためには、定期的な効果測定とBtoB特有の購買プロセスを意識した情報発信がカギとなります。ここからは、製造業マーケティングに取り組む際に押さえておきたいポイントを紹介します。

ポイント1.目標を設定して効果測定を行う
マーケティング施策ごとに具体的な目標(KPI)を設定して、定期的に効果測定を行うことが重要です。施策の効果を数値として見える化することで、現状課題の特定や原因の分析ができるようになり、アプローチの見直しにつなげられます。
▼目標設定の具体例
- Webサイトへの訪問者数・滞在時間
- 資料ダウンロードや問い合わせに至った割合(コンバージョン率:CVR)
- 見込み顧客や案件の獲得にかかった1件当たりのコスト(顧客獲得単価:CPA)
ポイント2.比較検討や稟議に役立つコンテンツを充実させる
製造業のBtoB取引では、決裁までのルートが複数の担当者にまたぐケースも少なくありません。Webサイトに訪れた担当者が、他部門や決裁者に製品・サービスの特徴を説明しやすいように、比較検討や稟議に役立つコンテンツを充実させることがポイントです。
これにより、選定段階で自社が候補から外れてしまうことによる機会損失を防ぐことが可能です。また、これらの情報をまとめたホワイトペーパーを作成して、資料のダウンロードを促すことで、見込み顧客の獲得にもつなげられます。
▼比較検討や稟議に役立つコンテンツの具体例
- 自社製品・サービスの比較表
- 製品・サービスの選定ガイド
- 導入効果やコストのシミュレーション など
ポイント3.イラストや動画などの視覚的要素を取り入れる
製造業特有の専門的な技術や複雑な機能、無形のソリューションなどを文章だけで理解してもらうことは難しいといえます。
視覚的に分かりにくいWebサイトやコンテンツは、最後まで読むハードルが高くなり、次のアクションを起こす前に離脱されてしまう要因にもなります。
自社製品・サービスの特長や技術力を分かりやすく伝えるには、イラストや動画を活用して視覚的に訴求することがポイントです。
▼視覚的要素を取り入れた訴求例
- 複雑なシステム構成や製造プロセスなどをイメージ化したイラスト
- 実際の納入現場や工場内の設備、品質管理体制などを撮影した写真
- 生産ラインの流れや作業の様子などを撮影した動画 など
まとめ
製造業マーケティングは、中小企業が限られた経営リソースを有効活用して、効率的に案件の獲得やLTVの向上を目指すための重要な戦略の一つです。
成果の最大化を目指すためには、Webを活用した集客施策をはじめ、オフラインも含めたハイブリッド施策や既存顧客へのフォローなどにも取り組むことがポイントです。
「Webサイトを立ち上げたが問い合わせがこない」「自社の強みをどのようにアピールすればよいか分からない」などの課題をお持ちの方は、外部支援を活用することも有効です。
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