製造業ブランディングの始め方|中小企業が差別化を図る「価値創出」の戦略とは
中小製造業において「展示会や紹介頼みの営業では限界がある」「価格競争から抜け出したい」という課題に直面している企業も多いのではないでしょうか。
限られたリソースのなかで将来にわたって持続可能な経営基盤を構築するには、自社が持つ「独自の価値」を創出して競合他社と差別化を図ることがカギとなります。
そこで重要な戦略の一つとなるのが「ブランディング」です。
この記事では、中小製造業におけるブランディングの重要性や取り組むメリット、自社の価値を創出するための戦略策定のステップについて解説します。
ブランディングとは?

ブランディングとは、自社の商品・サービスに対するイメージを確立して、独自の付加価値を創出する戦略のことです。
ブランディングと聞くと、単に「認知度を上げること」と考える方もいるかもしれませんが、本質的な目的は異なります。商材が持つ魅力やコンセプトなどを一貫したメッセージ(キャッチコピー・名称・ロゴ・デザインなど)で示すことにより、自社が目指すブランドの姿を思い描いてもらうことが目的です。
中小製造業がブランディングを通じて独自の付加価値を提供することで、価格・機能・性能による差別化が難しい市場において、競争優位性の向上を目指すことができます。
マーケティングとの違い

ブランディングと混同されやすい企業戦略の一つに「マーケティング」があります。
マーケティングは、自社商品・サービスを売るための仕組みをつくる施策全般を指します。例えば、Webサイト運営・広告宣伝・プロモーション活動・イベントの出展などによって認知の拡大や引き合いを増やす施策が挙げられます。
それぞれ施策の目標や指針に違いがあります。
▼ブランディングとマーケティングの違い
| ブランディング | マーケティング | |
|---|---|---|
| 目標 | 企業・商材に対する付加価値を高める | 商材の売上を向上させる |
| 施策の指針 | ステークホルダーからの信頼や好感を醸成する | 顧客の購買行動を喚起する |
マーケティングでは、「どうすれば商品が売れるか」に焦点を当てて、顧客の購買行動を後押しするための直接的なアプローチを行うことが特徴です。
一方のブランディングでは、「自社を選んでもらうための理由(価値)をどう生み出すか」に焦点を当てます。自社が持つ魅力や強みを「言葉」「デザイン」といった目に見える情報に変換して発信を行い、顧客から見たイメージを確立させることを目指します。
製造業のマーケティングについてはこちらの記事でも解説しています。
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中小製造業にブランディングが重要な理由
ブランディングは、中小製造業が持続的な経営基盤を築くための重要な戦略の一つといえます。その理由として、以下が挙げられます。

製品や技術力での差別化が難しい
インターネットが普及した現代では、BtoB取引の顧客が容易に製品・技術に関する情報を収集して比較検討できるようになりました。
高品質の製品や独自の製法、高い技術力などの強みを持っていても、その情報が認知されて「価値のあるもの」と評価されなければ、受注の獲得が難しくなっています。
また、技術水準の向上や市場の活性化などにより、「技術力」「設備」「機能」「サービス」が均質化し、他社との差別化が困難になっている分野も少なくありません。
このような市場環境で中小製造業が選ばれる存在となるには、ブランディングを通じて自社の付加価値や信頼を創出することが必要です。
社会や環境への貢献が重視されている
近年、製造業では「サステナビリティ(持続可能性)」というキーワードが注目されています。エネルギー資源を多く消費するモノづくりの現場には、地球環境への負荷低減に向けた取り組みが強く求められるようになりました。
また、世界的にも持続可能な社会の実現に向けた取り組みが広がっています。
▼世界的に広がる取り組み
| 取り組み | 概要 |
|---|---|
| カーボンニュートラル | 温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡を図り、脱炭素社会の実現を目指す取り組み |
| グリーントランスフォーメーション(GX) | 化石燃料(石油・石炭)を使用した経済社会構造から再生可能エネルギー中心に転換し、脱炭素と経済社会システムの変革を目指す取り組み |
| サーキュラーエコノミー | 限りある資源を循環・再利用して、環境負荷の低減と付加価値の最大化を目指す経済システム |
このように社会や環境への貢献が重視される今、モノづくりを担う製造業にも社会の一員としての責任を果たすことが必要となっています。
中小製造業がブランディングを通じて「社会・環境問題に対する企業姿勢やミッション」を示すことは、サプライチェーンからの信頼を得るために不可欠な取り組みといえます。
長期的な関係構築が求められている
製造業のBtoB取引では、一度きりの売買契約ではなく、定期的な保守・メンテナンスや追加受注、数年後のリプレイスなどによる継続的なビジネスモデルが主流となっています。
長期にわたるパートナーシップを築くには、「既存顧客との関係性を築くこと」が求められます。信頼をより強固なものにするために、ブランディングによって自社のモノづくりの理念や将来のビジョン、自社の存在意義を社外へ一貫して発信することが必要です。
既存顧客に向けて「共に成長して、未来を切り拓くパートナーである」という姿勢を伝えることで、競合への乗り換えを防ぎ、安定した経営体制を築くことにつながります。
中小製造業がブランディングに取り組む5つのメリット
中小製造業にとってブランディングは、市場の競争優位性を長期にわたって確保していくための「資産」を育てるプロセスになります。ブランディングに取り組むことで、以下のメリットが期待できます。

メリット1.市場競争力の強化につながる
独自のブランドイメージを構築して付加価値を創出することで、低コスト・短納期・高性能といった要素のみで比較される市場競争に巻き込まれにくくなります。
業界内で「このメーカーにしかない魅力がある」「この会社に信頼がある」といった認識が定着すると、数ある競合他社から自社を選んでもらう決め手となり、商談成約率の向上が期待できます。
また、業界や専門分野において「○○ならこの企業」と思い出してもらう効果により、顧客の課題・ニーズが顕在化したタイミングで引き合いを受けられる可能性も高まります。
メリット2.LTV(顧客生涯価値)の向上を図れる
ブランディングを通じて顧客からの信頼を獲得することで、単発の受注で終わらない継続的なパートナーシップを構築できます。
「設備導入後の保守・メンテナンスまで依頼したい」「次回の製品開発も任せたい」など、継続的な関係性を築くことにより、安定した利益の確保につながります。
このような長期的な契約や追加受注によって「LTV(顧客生涯価値)(※)」を向上する仕組みをつくることは、中小製造業が持続的な成長を目指すうえで重要といえます。
※1人の顧客が自社にもたらす利益の総額
メリット3.ブランド拡張に挑戦しやすくなる
ブランド拡張とは、既存のブランドが持つ信頼を活かして、新たな製品・サービスを展開する成長戦略です。
ブランディングに取り組み、「製品の性能が高い」「技術力に信頼がある」といった高い評価を獲得することで、そこで育てた資産を引き継いで新市場に挑戦しやすくなります。
ゼロから新ブランドを立ち上げる場合と比べて、プロモーションコストを抑えつつ市場シェアを拡大しやすくなるメリットがあります。
▼ブランド拡張の具体例
長年信頼を得てきた生産設備メーカーが、現場の課題解決ノウハウを活かして「稼働状況の監視用ソフトウェア」を開発・販売する
メリット4.従業員エンゲージメントの向上につながる
製造業ブランディングは、自社の従業員に対してもポジティブな影響をもたらします。
「自社の製品や技術が社会にどう役立っているか」「社会の一員としての存在意義は何か」などの情報を社内に発信することで、企業に対する誇りや愛着が醸成されます。
これにより、組織の一員として働くことのやりがいやモチベーションが生まれ、従業員エンゲージメントの向上に結びつきます。
また、組織が活性化することで人材の定着化や自己鍛錬が促され、高品質なものづくりを維持し続ける好循環が生み出されることも期待できます。
メリット5.優秀な人材の確保が期待できる
人材不足の課題を抱える中小製造業にとって、ブランディングは採用戦略にもなります。
近年、働き方や働く人の価値観が多様化しています。求職者が就職先を選ぶ基準として「給与・労働条件」だけではなく「その企業で働く価値」「企業の存在意義」を重視する傾向が見られています。
ブランディングを通じて自社の理念やビジョン・ミッション、社会貢献活動などを明確に発信することで、その価値観に深く共感する人材を引き寄せることができます。
自社の社風や考え方に合う「カルチャーマッチ」を重視した人材採用ができれば、入社後のミスマッチを防止できるほか、長期的な組織力の強化につなげられます。
製造業ブランディングの始め方|戦略策定の流れを4つのステップで解説
製造業ブランディングを始める際は、ブランドの中核となる「価値」を明確にしたうえで、ステークホルダーに一貫性のあるメッセージを継続的に発信することがポイントです。
ここからは、具体的な流れを4つのステップで解説します。

①自社の技術や製品を分析する
製造業ブランディングの第一歩は、自社の技術や製品を分析することから始まります。
自社を取り巻く市場環境や競合他社の商材を分析して、「自社がどのような立ち位置にいるか」「ターゲットとなる顧客層はどれか」などを多角的な視点で整理します。
分析を通じて自社の置かれている状況や製品の特徴を可視化することで、ブランディングにおける訴求の方向性を具体的に検討しやすくなります。
▼このステップで可視化しておくこと
- ターゲット市場
- 顧客層
- 製品・サービスの内容
- 強み・弱み
- 製造技術
- 品質レベル
- 生産体制 など
②ブランドの根幹となる価値を定義する
自社の技術や製品の情報を整理できたら、「何を価値として訴求するか」を定義します。
この価値の定義が曖昧になると、一番伝えたいメッセージが伝わらず、自社ならではの強みや独自性をアピールすることが難しくなります。
価値を定義する際は「何ができるか・どのような技術を持っているか」という主観的な視点ではなく、その裏にある背景的なプロセスや理念、企業姿勢などにフォーカスすることがポイントです。
▼ブランドの価値をつくる要素例
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 存在意義 | 社会のなかで自社が「何のために存在するのか」「なぜこの事業を行うのか」という普遍的な意味・理由 |
| 理念 | 経営における基本方針や、創業者・経営者が大切にしている価値観・考え方 |
| ビジョン | 自社が将来的に目指す姿や未来に実現したいこと |
| ミッション | 事業活動を通じて自社が果たす使命、社会的な役割 |
| 製品・サービスのコンセプト | 自社の製品・サービスが提供する本質的な価値、顧客にもたらすベネフィット |
| 企業ストーリー | 創業の経緯や困難を乗り越えたエピソード、製品アイデア誕生の秘話など |
| 自社独自の強み | 競合他社ではなく、自社が選ばれる明確な理由 |
③ブランドアイデンティを設計する
定義した価値を踏まえて、ブランドアイデンティティを設計します。
ブランドアイデンティティは、ブランドが持つ個性や世界観を直感的に理解してもらうために、企業が意図的に設計するイメージのことです。
「自社のブランドらしさは何か」「どのように表現するか」を考えて、顧客に対して一貫性のあるメッセージを伝えられるようにすることが重要です。
ブランドアイデンティティの構成要素には、大きく2つに分けられます。
▼ブランドアイデンティティの構成要素
| 構成要素 | 意味 | 具体例 |
|---|---|---|
| バーバル・アイデンティティ | 言葉やトーン&マナーなどの言語的要素 | ・ブランドメッセージ ・キャッチコピー ・ブランドストーリー ・トーン・オブ・ボイス など |
| ビジュアル・アイデンティティ | 色やフォント、デザインなどの視覚的要素 | ・ブランドロゴ ・シンボルマーク ・ブランドカラー ・写真・イラストのトーン ・グラフィックパターン など |
例えば、製品の性能や技術が持つ「先進性」を価値として伝えたい場合には、「理論的で誠実なトーン」「数字・データを使ったキャッチコピー」などの言語的要素が考えられます。
また、視覚的要素として「洗練さ」「モダン」といった印象づくりをしたい場合には、シルバー・グレー・ダークブルーの色や、直線的でシャープなロゴ、グラフィックデザインを使用するアイデア例があります。
④顧客接点を設計してメッセージを発信する
最後に、ターゲットとの顧客接点を設計してブランドメッセージを届けます。
製造業のBtoB取引では、決裁プロセスで複数の担当者を経由することも多く、検討期間が長くなる傾向があります。
顧客接点を設計する際は、Webサイトでの情報収集から比較検討、問い合わせ、商談、アフターフォローに至るまでの購買プロセス全体でブランドの価値を発信することが必要です。
▼顧客接点の設計例
| 顧客接点 | 役割 |
|---|---|
| 自社Webサイト | Webサイトを通じてブランドが持つ価値を視覚的・言語的に表現し、信頼や誠実などのイメージを醸成する |
| 自社SNS | 組織文化や現場のリアルを文章・写真・動画で発信し、既存顧客や求職者からの親近感と信頼を醸成する |
| 広告 | ブランド価値をターゲットにもたらす「ベネフィット」として認識させ、ポジティブなイメージを獲得する |
| 展示会 | ブースデザインやリアルな体験を通じてブランドの世界観・価値を表現し、来場者の感性に訴求する |
| 業界情報誌・ポータルサイト | 社外媒体に自社の技術や専門性を示すコンテンツを掲載し、読者層に対して業界での立ち位置や権威性を示す |
| ホワイトペーパー | 顧客にとって有益な情報や自社の強みを客観的に示すノウハウなどを分かりやすく掲載し、信頼を醸成する |
上記のなかでも特に中心的な存在となるのが「自社Webサイト」です。
Webサイトのキャッチコピーやデザイン、コンテンツなどでブランドアイデンティティを表現することにより、訪れたユーザーにイメージを浸透させることができます。
まとめ

中小製造業が競争力を高めて持続的な成長を目指すためには、ブランディングを通じて独自の価値を創出することが重要となります。
ブランディングに取り組む際は、「自社が持つ価値は何か」を定義して、あらゆる顧客接点において言葉やビジュアルを通じて一貫したメッセージを発信することがポイントです。
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